2009年01月12日 15:29

香焼炭鉱・横島炭鉱(長崎市香焼町)

撮影日:2008(H20).12.30
「横島」における炭鉱開発について、「香焼町郷土史」より抜粋記載します。

横島は、安保の南西約700mの海上に横長く浮かぶ岩礁である。
明治17年(1884)の「西彼杵郡村史」によると東西330m、南北61m、周囲193間・・・、竹崎より西方海上直径181mにあり、人家耕地なく、松樹疎立す」とある。
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炭鉱の栄華すべてを海底深く封印した横島については・・・

当時の郷土史には、「横島は香焼村の島の中で最も大きく、安保郷の正面に横たわる島で海底には石炭があるので、安保炭鉱と伴に村の宝庫の感がある」と記されている。
絶海の孤島であった横島に、三菱合資会社が炭鉱の開発に着手したのは明治27年(1894)、翌28年石炭試錘、同30年海岸の埋立を開始、翌年から出炭。

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明治33年、炭鉱最盛期に撮影された写真からは、中央の煙突は動力源の汽缶場等、その手前が貯木場とみられ団平船が接岸、南立鉱のやぐら、北排気鉱、住宅、病院、小学校が確認できる。
明治31年に香焼が村制を施行したときの村の戸数が511、人口2,107で、その内横島は120戸、人口700であり村内でもかなりの位置にあったことがわかる。最盛期には130戸、人口は700を数え、明治33年には私立横島小学校も創立されている。
香焼で最初に電気が灯ったのも横島であったとのことである。

海岸の埋立に伴って、周囲を石垣で張り巡らし山頂から東側に14,267平方mの埋立地を造成し炭鉱の島を形成したが、約12万トンを出炭し盤ぶくれに遭い、石炭の層を見ながら明治35年(1902)ついにその短い歴史に幕を下ろした。
※盤ぶくれ・・・巨大な地圧で坑道の壁がひしゃげ、天盤は下がり、ときには下盤も隆起してくること。

閉山後、島を支えていた石垣は取り外され、古老の話によれば端島方面に運ばれたとのことである。このため埋め立てた土砂は残らず流失し岩礁と化した。

昭和初期の「横島」の山頂は、わずかにかやなどが生え、その中央に四角い北排気鉱跡があり、また、南側には南立坑の跡が大きな口を開けていたそうである。

閉山から約60年の星霜が流れた昭和40(1965)年頃、山頂の西側の岩礁が徐々に海中に没し、山頂も傾斜して少し沈下、山頂より東側も一部が水没して今日のように2つの岩礁の横島となった。

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横島周辺の海底には、往時の石垣の根方の一部が今日でも残っているらしい。
今は好釣場として釣り人が訪れるだけである。

「かつて、炭鉱の島として咲きに栄えた横島の運命は、あまりに太くて短く、朝な夕なにその岩礁を眼のあたりにするときに、今昔の感に堪えず、その末路が哀れでならない。」と郷土史は結んでいる。

岩礁と化した「横島」。まさに「跡形もなく」とはこのことか・・・。
形あるすべてのものは波にのみ込まれ、かつてこのちっぽけな岩礁に巨大な炭鉱都市が存在した史実すら、記憶の中から消え去ってしまうのでしょうか・・・。


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1. 日本炭鉱第5竪鉱(若松区蟹住)探索記  [ 北九州の廃線と廃坑を歩く ]   2009年02月16日 23:26
今回は直接鉄道とは直接関係は無かったが蟹住団地の近くに在ったと聞いていた日本炭鉱第3坑第6竪鉱を探しに行く。二島坑と坑道で繋がっていた為の入昇坑として坑夫機会の搬入口であったようだ。昭和39年の開始である。写真をクリックすると大きくなります。 蟹住団地...

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3. Posted by 三上洋   2013年08月25日 16:53
ITジャーナリストの三上と申します。素晴らしい記事拝見しました。メールを差し上げましたので、よろしければご覧いただけませんか。よろしくお願いします
2. Posted by ちび太郎   2010年01月18日 21:54
blueswave さま

こんばんは。
古い記事でも、見ていただけるだけで嬉しく思っています。
ご遠慮なく、コメント頂けると幸いです。

「横島」の史実は、大げさに言えば「軍艦島」にも匹敵するくらいの物語が
あるように感じます。

初めて電気が点き、学校までもあった横島。
採炭が順調であれば、軍艦島に匹敵する人工島になったのではないかと
思います。

遠い昔のことですから、この史実さえ消えてしまいそうな感じがしますが、
香焼、いや長崎の歴史として語り伝えて欲しいと思います。
1. Posted by blueswave   2010年01月18日 11:21
またまた古いブログをほじくり返して申しわけありません。私も横島には興味を持ちまして、話を聞いたり図書館で本を見たりしました。いまも仕事の日には必ず見えますが、なんとなく気になって、ちらっとですが見てしまいます。初めてこの島の話を聞いたときのことを日記に書いていますのでよかったらのぞいてみてください。下記アドレスにあります。


http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/blueswave/diary/200902

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